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センター長メッセージ


センター長 岩永 知秋
 昨年に続きこの夏も猛暑の夏です。各地で35度以上の高温や熱中症アラートの報告があい次いでいます。気象の記録上最も暑い夏になるかも、との報道もあります。筑後地方や秋田県などで痛ましい水害もおこり、これまでの日本の常態とは異なる状況が生まれています。そしてこの気候変動は日本に限ったことではなく、欧米諸国でも猛暑が続いているそうです。
米国では3桁気温(three digit temperature)、つまり華氏100度以上(摂氏では35度以上くらいでしょうか)が場所によっては連続20
センター長 岩永 知秋
日などと報道されています。カナダでも高温による広範囲の山火事、ヨーロッパでも高温による観光地の閉鎖など、気候変動の原因と言われるCO2削減は、言うは易く行うは難し、といったところでしょうか。
 さて、新型コロナウイルス感染症も足かけ4年となりました。2019年末に中国武漢市で始まり、わが国では翌年2020年2月から始まったこのパンデミックが、ここまで長引くとは思いませんでした。しばらくはウイルス株の毒性も高く、3密の回避、マスク着用、換気の徹底など、昔ながらの物理的な感染防御しか有効な手立てがありませんでした。しかし、ちょうど1年後の2021年2月先行接種から始まったワクチンは、人類の感染防御を立て直してくれました。ワクチン開発としては異例の速度でメッセンジャーRNAワクチンが登場し、このコロナ禍のゲームチェンジャーとなってくれました。いくつかの流行の波がありましたが、昨年末からの第8波はとりわけ大きな流行で、当センターでも入所者17名、スタッフ9名の計26名に及ぶクラスターを経験しました。幸い重症化する人は一人もなく、終息するに至りました。オミクロン株(Ba.5)への変異によって感染性は高まったものの、世界的にも致死率は下がりました。その後は現在までオミクロン株の中での変異(小変異、ドリフトと呼ばれます)にとどまっています。これらのことを踏まえて、この5月には感染症法上の取り扱いが2類から5類に引き下げられました。その前から感染者の把握は全数把握から、インフルエンザと同様の定点把握となりました。社会経済活動の再開に伴いようやく明るい気分が満ちてきましたが、足元では再び感染者の増加が起こっています。定点把握のため実数の確認は不可能ですが、沖縄では医療が逼迫するほどの感染者が報道されています。まだまだ医療や福祉施設では油断ができません。職員一同力を合わせて、これからも感染防御に努めつつ、種々の制限を徐々に緩和して、利用者や保護者の皆さんに、早くコロナ前の自由な生活を送っていただけることを目指して参ります。
 今年は11月16日(木)、17日(金)に西日本重症心身障害施設協議会総会を、当園と北九州総合療育センター、柳川療育センター、障がい児者医療生活支援ホーム虹の家の共同で開催します。会場は九州大学医学部百年講堂で、福岡県、全国重症心身障害児(者)を守る会のご後援をいただくことになりました。しばらくWEBないしハイブリッド開催でしたが、今回は原則として対面開催を予定しています。テーマは「重症児(者)支援の目指す方向~伴走する医療と療育の課題」とし、特別講演2題とシンポジウム1題を用意しました。充実した会議になるよう、他の3つの施設と協力して運営していきたいと思います。

久山療育園重症児者医療療育センターについて

久山療育園重症児者医療療育センター(「久山療育園」)は1976年9月に開園し、2008年度に「久山療育園重症児者医療療育センター」と名称を変更しました。それは、これまでの働きが創立理念に従って、進めてきた結果です。即ち「久山療育園は単なる収容施設ではなく、新しい福祉社会(福祉共同体)づくりの拠点である」という理念に基づいて、2015年7月に「在宅支援センター」が開設されました。
「在宅支援センター」の働きから福祉共同体の実現、地域医療連携へと、創立理念がようやく実現に至る端緒に着いたことになります。「在宅支援棟」の役割は、「在宅支援センター」の司令塔としての働きであり、「重症者ホームひさやま」は久山療育園の医療病床94床(①医療重点病棟、②療育重点病棟、③生活重点ユニット及び短期入所病床併設6床)へと繋がる第四の入居受皿となるグル−プホームです。これまで限界まで家庭で過ごして来られた重症心身障害児(者)とご家族の付託に応えられる「共にある」存在となれれば幸いです。